パフスリーブちょっと一言|パフスリーブ大好き、川上未映子さん
2008年「乳と卵」で芥川賞受賞,作家で歌手としても活躍する川上未映子のパフスリーブへの思いを見つけましたので紹介します。
何が好きってパフスリーブがこれもう本当にべらぼうに好きで、これって単に袖の形状がふわっとしているというそれだけのことなのに、なぜこんなにも胸がときめいてしまうのだろう。
どこの店に行ってもまず目が探すのは袖の辺り、そこに膨らみがあるかどうかが重要で、しかし最近は流行の都合もあるのでしょうけれど好みのパフに遭遇するパフ率がかなり低くてとても悲しい。
気休めにぴらりんとついてるようなパフは至る所に混在しているのだけれどもいやんいやん。
求めているのはなんというか全方位に重厚感のあるパフなのです。
そう、それは今では映画などでしかお目にかかることもできない(昨夜観(み)ちゃった『エリザベス』、なんという衣装の描写力の素晴らしさ)、しかしかつて男も女も問わずに大流行したというバロック時代のあのけっこう本気な感じなのですけれど、むろんどこにも売ってない。
しかしですよ、靴下屋とか下着屋とかスポーツウエア屋といった専門店というものが存在しているにもかかわらず、なぜ「パフスリーブだけを集める店」が存在しないのだろうかと私は常々少しだけ不満な気持ちでいるのです。
ビショップスリーブ、メロンスリーブ……日常着からハレの日の装いまで様々なジャンル&ブランドのパフスリーブだけを揃(そろ)えたお店。
そこに行けばありとあらゆるパフにまみれること必至なお店……。
パフスリーブの精神が何であるかを定義することは難しいけれど、少なからぬ女性の根幹に「善き物」としての影響を与えていることは確実だと思われるし、去年は「りぼんブーム」もあったことだし、やっぱパフって普遍的にかわいいのだよね!誰か出店しないかなあ。
そうなったら私もうそのお店以外では買わないよ。
っていうか頼み込んで、バイトするよ。
ああ日本中のパフを見渡す場所に立ってそれを心ゆくまで愉(たの)しむこと……おめかしにおける私のひとつの夢であることです。(作家)